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■■■ 人口着色料笑え。 上を向いて、笑え。 太陽を睨みつけて嘲笑ってやるんだ。 ほら、空は晴れている。 こつん。 雨にしてはやけに硬い音で、オレの額に何かぶつかってきた。 イテェ、と叫ぶ前に、ざらざらざらって小石が転がるような音がして。目の前にどばーっと降って来たのは。 「……アメ?」 「そ」 棒の先にくっついた丸い砂糖玉がいっぱい。呆然と呟いたら、何と返事が返ってきた。その声に聞き覚えがありまくったのは気のせいじゃない。むしろほかにこんなことしそうなヤツが思い付かねぇ。 「やほ、ナールト」 振り返ると案の定、カカシ先生がいつもの何考えてんだか分かんない顔で立ってた。 「センセー、何」 「んー、飴?」 「そんなん見りゃ分かるってば。オレは、どーしてこんなことしたのか訊いてんの!」 気が付くとオレの周りにはアメがごろごろ転がっている。勿論ラッピングされてるから汚れても大丈夫だけど、道の上に食べ物が落ちてると勿体ない気がするじゃん! あーもー、と唸りながらオレはアメを拾い集める。悔しいけどカカシ先生の手はオレよりかなり大きいから、オレの手には全部入りきらない。山盛り拾ったのにまだオレの周りにはカラフルな色が一杯。 「センセー」 にこにこ笑いながらこっちを見てる先生を見上げると、ちょっと多かったねぇなんて呟きながら残りを拾ってくれた。 手から零れ落ちそうなアメを、先生の手が掬い上げる。 なんだか胸がきゅうとして、オレは先生の視線から逃れるように下を向いた。 「ナルトにね、あげようと思って」 優しい声が上から降ってくる。何だよ、こんなの反則じゃん。だって空は青いのに。地面は乾いてるのに。 「……こんなに、食えねーってば」 「気が向いた時に食べてよ、腐りやしないからさ」 「夏になったら、溶けちゃうってば」 「じゃあ冷蔵庫に入れとこうか」 ずるい、ずるいずるいずるい。 カカシ先生は悔しいほどオレより大きくてイイ男なんだ。 手に持っていたアメを、カカシ先生の手に押し付ける。勢いが良すぎて零れてしまったアメを拾って、べりべりと包装を剥いた。人口着色料たっぷりの、青色のアメ。 口の中に突っ込むと、少しだけしょっぱいソーダの味がした。 |